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“透明なパンツ”をつくるOne Novaが陥った不透明な活動。

人間、誰だってお金の失敗くらいある。連載「お金に負けた日」では、人がどんな失敗をして、その度にどうやってその局面を乗り越えてきたのかを探ります。今回登場するのは、“世界一透明なパンツ”をつくるOne Novaの高山泰歌さんと金丸百合花さん。透明性を打ち出し、大学生ながらに起業したふたりが、若くして経験したお金の失敗と苦労を探ります。

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高山泰歌(たかやま・たいが)|One Nova CEO。1998年生まれ。幼い頃から「起業」に憧れを抱き、慶應義塾大学(SFC)へ入学。入学してすぐ高校からの同級生の金丸とOne Novaを立ち上げ、CEOに。
金丸百合花(かねまる・りりあん)|One Nova共同創業者兼広報PR。1999年生まれ。高校生の頃に出合ったバランゴンバナナに魅せられ、社会問題を解決するソーシャルビジネスに興味を持つ。慶應義塾大学に入学し、高山とOne Novaを創業。

友人の父親から借りた100万円

——One Novaといえば、ちょうど1年前に“世界一透明なパンツ”を掲げてスタートしたクラウドファンディングが話題になりました。これまで、お金の苦労はありましたか?

高山:創業してしばらくはめちゃくちゃ順調だったんです。会社をはじめるときの資金として100万円を同級生の親が貸してくれたり、大学の授業で出会った投資家の方が500万円を出資してくれたり。

——それ、詳しく教えてください。

高山:中学1年生のときに仲良い女の子の家に遊びに行くことがあったんです。そのときに焼肉を食べたんですけど、前に座ってたその子のお父さんと話したら、なんと経営者で。当時から起業したいと思っていたので「どうやったら社長になれますか?」って聞いたんです。そしたら、お父さんも熱くなって、そのまま肉も食わずに話し込んじゃって(笑)。それを境にすごく良くしていただけるようになり、会合に同席させてくれたりと6年間ほど経営のイロハを勉強する機会をくれたんです。

——めちゃくちゃ気に入ってもらえたんですね。その方に100万円借りたんですか?

高山:はい。大学生になって百合花と一緒にパンツで起業することにしたときに、100万円くらいは必要だと思って連絡したんですよ。それで会いに行ったら、「この日を待ってたよ」って。なんか結婚の挨拶みたいですごく緊張したんですけど、「いつか返してくれればいいよ」と即日で100万円を貸してくれたんです。

——男気がすごいですね。そのときの100万円で起業を?

高山:いいえ、そのお金はパンツをつくるための工場探しとか、勉強のために使わせていただきました。ただ、今度は製造にお金が必要だということになって。そのときに出会ったのが現メルペイ代表の青柳直樹さんでした。大学の授業にいらっしゃったときに「このクラスで誰かに300万円投資するから」って。

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授業に来た投資家から500万円を調達

——それがふたつ目の話につながるわけですね。それって投資家の争奪戦になったんじゃないですか?

高山:授業終わった途端に全員が青柳さんのところに行ってピッチをはじめました。僕も軽い気持ちで「パンツをつくってオンラインで売ろうと思ってます」と話したら「それ、D2C?」って聞かれて。そのときは言葉の意味もよく知らず「はい!」と即答したんですけど、そのあとツイッターで連絡をいただいて会うことになり、1週間くらい猛勉強して企画書をつくりました。もともとパンツをつくって売るくらいにしか考えていなかったのですが、D2Cというビジネスモデルに当てはめてOne Novaのモデルができたのは青柳さんのおかげですね。

——そして、出資もしていただいたと。

高山:はい。しかも、事前に話していたよりも多い500万円を出資していただいて。それからも自分たちで出資元を探したり、金融公庫にプレゼンしたりして合計で2,000万円ほど集めました。それと併せて会社も登記して。

——立ち上がりは本当に順調ですね。

金丸:そうなんです。でも、資金調達の前は本当にお金がなかったので、友人にお願いして手縫いでパンツのサンプルをつくったり、泰歌がモデルやっていた時期もありました。

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クラウドファンディングからの失速**

——その勢いのまま、はじめてのクラウドファンディングに挑戦したと。

高山:はい。大学2年生の4月なので、ちょうど1年前ですね。“世界一透明なパンツ”というキーワードだったり、NEUT MagazineBAMPというメディアで取り上げていただいたこともあって、400人から200万円を集めることができました

金丸:その頃はいろんなことがトントン拍子に進んでいましたね。ただそれからが大変でした。

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高山:クラウドファンディングが終わった途端に話題に上がらなくなって。ECサイトもつくったんですけど、2カ月くらい売り上げがほとんどない状態でした。

——はじめて、つまづいたわけですね。

高山:そうなんです。あの頃は売り方なんて何もわかってなかったので、例えばML各サイズを同じ数だけ準備してたんですけど、Mサイズだけクラウドファンディングで売り切れちゃって。いちばんニーズがあるサイズをたくさん用意することもできてなかったんです。

金丸:クラウドファンディングで話題になったから「意外といける」と思っていただけにかなり落ち込みましたね。8月2日を「平成最後のパンツの日」と名付けて売ったり、新色を出したりして一時的に売上が伸びるときもあったんですけど低迷が続いて。そういえば、売れなくてどうしていいかわからなくて、泰歌がブルーボトルコーヒーで泣いたことがあるよね(笑)。

高山:え、泣いたっけ。記憶にないや(笑)。

——どうやってスランプを乗り越えたんですか?

高山:同級生と一緒にチームを組んでいたんですけど、みんなゼミとかで忙しくなって連携が取りにくくなっていたので、組織を立て直すために解散することにしました。

金丸:それからOne Novaでモデルをしてくれていた友人が組織づくりに長けていたので誘って、私たちと3人でリスタートしました。

高山:その後、CAMPFIREでマーケターをやっている方にお手伝いをお願いしたり、イベント担当も専属でつけたりして、現在は5人のチームになっています。それが功を奏したのか、今年の1月からは月商も100万円を超えるようになりました。

——体制を整理したおかげですね。

高山:手伝ってくれているマーケターがすごく優秀で。SNSなどの広告の仮説検証をしてくれて、まったく売れないところから脱出できました。その流れで現在は、“世界一透明なくつ下”で2回目のクラウドファンディングに挑戦しています。

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——順調ですか?

金丸:正直なことを言えば、前回よりも伸びは良くないけど、去年も応援してくれた方が買ってくれたり、去年より大きな規模でローンチイベントができたりしているので、進歩していると感じています。1年間で見守ってくれる人が増えたというのはすごい功績だなと。だから、今回も頑張りたいですね。

——ちなみに、自分たちの給料はどうしてるんですか?

高山:One Novaからは出してなくて。僕らは今ALL YOURSでインターンをさせていただいているので、自分たちの生活はそこでなんとかしている感じです。組織づくりとかすごく勉強になるし、めちゃくちゃありがたい環境なんですよね。

金丸:店頭でOne Novaも置かせてもらっているので、一緒に買ってもらえることもあって。自分たちのブランドに生かせる知識を学んでいます。

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お金も実績もあるのに、上手くいかないジレンマ

——話を聞いていると、お金はあったけど使い方に試行錯誤してきた印象が強いですね。

金丸:私たちはお金だけあって、やり方がわからなかったんです。最初はサイズのこともわからずに生産していたけど、そういった部分もALL YOURSに関わるようになって学びました。

高山:お金を使うようになって、お金の大切さを知ったというか。なんていうか、ちゃんとその道のプロになるべきだと思いましたね。

——というと?

高山:最初は学生の知り合いに仕事をお願いしていたんですけど、どうしてもプロには勝てないんですよね。実はロゴも今のもので3つ目なんです。2回ほど学生のデザイナーにお願いしたんですけど、こちらの指示がぼんやりしていたばかりにイメージと違う感じになってしまって。それでプロの方にお願いしてできたのが今のロゴなんですけど。僕たちに力がない分、考え方やつくり方を一緒に取り組みながら教えてくれる人とやった方が勉強になるし、良いものがつくれると学びました。

金丸:それにちゃんと叱ってくれるときもありますしね。そういう意味では、ALL YOURSの木村さんにはすごくお世話になってます。お金とクラウドファンディングの実績と“世界一透明なパンツ”というキーワードが揃ったがために話題になったけど、1年前の私たちは中身が伴ってなかったから。そういうことも気づかされました。

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——“透明なパンツ”をつくってる自分たちの活動が不透明だったと。

金丸:うまいこと言いますね(笑)。なんか、カニカマみたいだなって。本当はかまぼこなのに子どもたちからカニだと思われてる、みたいな。騙したいわけじゃないんだけど、ずっと申し訳ない気持ちでした。

高山:最初からビジネスできる人がこのお金を使ってOne Novaをやっていたら、もっと綺麗な成長曲線を描いていたんだろうなって思うんですよね。だけど、この1年で失敗も含めて経験できたことは僕たちにとってすごく糧になっている。実は今、商品力を上げるために、この1年間で見つけた”パンツの最適解”に合うような糸を見つけて、それを使った最強のパンツを8月くらいに発売する予定なんです。売り方についてもこれまで以上に考えて、もっと多くの人に“世界一透明なパンツ”を履いてもらえるようにしたいと思っています。

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文:すみたたかひろ 編集:村上広大 撮影:大森めぐみ

※One NovaがCAMPFIREでクラウドファンディングに挑戦中! 募集は6月27日まで。詳細については下記よりご確認ください。

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