居候男子・木津歩は、どれだけ生活が苦しくても、“移動生活”で得られるインスピレーションを求め続ける。

肩書きを聞いてもどんな仕事をしているのかよくわからない人たちのリアルなお金事情を探ろうという連載企画「ところで、どうやって稼いでいるんですか?」。第2弾では“居候男子”を名乗る木津歩さんをピックアップします。居候男子とは、最近話題になっている家を持たない“アドレスホッパー”のひとつの形で、定住する場所を持たず、居候を繰り返すことで住む場所を確保しているそう。そんな居候男子の気になるお金事情とは。

木津歩(きづ・あゆむ)|1992年2月生まれ。コミュニティを旅する居候男子。一級建築士。2018年に建築士としての仕事をやめたタイミングで家を引き払う。友人の家やシェアスペースなどを転々としはじめ、居候男子を名乗るように。兵庫県香美町と関係人口契約を結んだり、お試し移住しながらその地域での暮らしの魅力を発信する創作ユニット「hyphen,」を結成するなど“アドレスホッパー”ならではの仕事を生み出している。@ayumukizu

——木津さんが居候生活をはじめるに至ったきっかけは?

大学を卒業して2年くらいは普通に働いてたんですけど、その後、建築士の資格を取るために1年くらいフラフラしてたんです。ようやく個人経営の設計事務所で働くようになったんですが、週4しか勤務日がなくて給与も十分ではなかったので、事務所近くの安いシェアハウスに住むようになったんですけど、そこがとにかく謎な空間で(笑)。

——予想と違った?

シェアハウスってキラキラしてるイメージがあるじゃないですか。でも、そういう感じではまったくなくて。コミュニティマネジャーが住民のカオスを詰め合わせた場所にしたかったらしく、住んでるのもフリーランサーやデザイナー、銀行員、ベンチャー企業社員など、いろんな職種の人がごちゃ混ぜ。でも、圧倒的に楽しかったんですよね。そこに2018年の3月まで住んでました。

——楽しかったのに、なぜシェアハウスを出たんですか?

事務所を辞めることになって、お金がなくなったからです(笑)。それで実家に戻ったのですが、この歳で職なし実家暮らしはやばいなと。そんなときにたまたまバンコクのシェアハウスに友人が住んでいたので、フレンドファンディングアプリの「polca」で4万円くらい集めて、2週間遊びに行ったんです。

——居候への道を歩み出したわけですね。

はい。その後も日本に戻ってきたら、知り合いの30歳バツイチ女性と「バツイチ女とヒモ男」という名前で共同生活をコンテンツとして発信するために、一緒に住もうという話が持ち上がりまして(笑)。

——なんですか、その夢のような企画。

「ヒモ」という悪いイメージを払拭する文化がつくれるかもしれないと思って、そのときに「居候」という言葉を使ってブログをはじめたんですよね。でも、実はその人に彼氏がいて、企画自体がなくなりました(笑)。それでまたお金と家がないことをアピールしていたら、今度は石川県でシェアハウスを運営している友人が呼んでくれて。1カ月食費込み3万円という話だったんですが、いかんせんお金がないので、シェアハウスのリノベーションを手伝う代わりに家賃をほとんどタダにしてもらいました。そのあとは北海道にいる友人が住み込みでゲストハウスを手伝ってほしいというので、またpolcaで移動費を集めて向かって。この頃から、生活を発信することを仕事にできないかと思うようになったんですよね。

——なんでお金が集まるんですか……?

Twitterをずっとやっていたのと、「SUSONO」という心地良い暮らしを考えるコミュニティに所属していたことがあって、それらで繋がった人たちが助けてくれて。その後も千葉の実家を挟みながら、兵庫、大阪、青森、岡山、北海道と移動して、次は岩手に向かいます。

——次々と移動していますが、住む場所はどうやって見つけるんですか。

向こうから「ぜひ来てほしい」と誘われることもあれば、行きたい場所にこちらから声をかけることもあります。あとは住み込みの仕事に応募したり。本当にいろいろですね。

居候から生まれた仕事がたくさんある

——いよいよ本題ですが、居候をしながらどうやって稼いでるんですか?

唯一生活のベースになっているのは兵庫県香美町との「関係人口契約」というのがあって。

——関係人口契約?

定住者でも、観光者でもない形で地域に関わる人を"関係人口"と呼ぶのですが、兵庫県に住んでいるときにどうにかリモートで関わる方法がないかと地元の人と飲みながら相談したんですね。その後、きちんと企画書をつくって、NPO法人から毎月定額のお金をもらう代わりに地方と関わり続ける契約をしたんです。地方との新しい関わり方を模索することに価値を感じてくれているんだろうなと思います。

——居候がお金になった、と。具体的にはどんな仕事を?

例えば、自分のブログにバナーを貼って宣伝したり、毎月のミーティングに参加したり。あとは Webサイトの運用やイベントの企画を手伝うこともあります。

——なるほど。移住がお金になった例は他にもありますか?

「関係人口契約」に際して、クリエイティブな仕事を請け負うことを示すために、デザイナーやエンジニア、カメラマンなどを集めて「hyphen,」という創作ユニットをつくりました。そのメンバーで青森県で共同生活をして雑誌をつくったり、SNSの発信をしてみたら、北海道の下川町から「移動と住むためのお金を払うから来てほしい」と話をもらって、お試し移住することになりました。今後も「hyphen,」としてきちんと仕事を受けられるように、まさに仕組みを考えているところです。

——それでも生活が厳しくなることはありますよね?

だから、居候先で仕事を手伝うことも多いですね。次回の岩手では漁師として働く予定です(笑)。

——多拠点でできたつながりをビジネスにする考えはないんですか?

僕は地方で友だちをつくるのがすごく好きなんですけど、そこに仕事を持ち込んだ瞬間にギスギスしたり、信用を切り売りするようなことになりかねないと思っていて。だから、現地で普通に働くことにしているんです。

移動生活の面白さはやってみないとわからない

——今の生活になって、お金に対する価値観は変わりましたか?

昔の方がお金を持つことが漠然としていて、あればあるほど良いと思っていました。でも、今はお金の使い道が見えるからか、これくらいあれば大丈夫だと思えるようになりましたね。もちろん、お金があればあるほど新しいことにチャレンジできるんでしょうけど。今は食費とか作業のためのカフェ代とかがまかなえればそれでいいかなって。固定費は携帯電話代くらいだし、モノもあんまり持ちたくないから。

——今後も居候生活を続ける予定ですか?

そうですね。楽しいし、もう1年くらいは続けたいですね。今後は複数の地域で人材をシェアするようなことが起こりうるだろうなと思っていて。さまざまな人が移動する多拠点コミュニティがつくれたらおもしろいと感じています。

——お金があっても、居候生活してましたか?

やってましたね。僕にとっては移動生活を通じてインスピレーションを得られることが圧倒的に重要なんです。ひょんなことからアイデアが生まれたりするので。あと、一定期間ごとに区切りをつけられるので、自分のペースで仕事の予定を決められるのも良いんですよ。でも、移動生活をしていない人には、このおもしろさをいくら口で説明しても伝わらないのかもしれない。だから、もっと人々が場所に縛られないようになるとうれしいですよね。

文・すみたたかひろ 編集・ペイミーくんマガジン 撮影・玉村敬太


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