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生活費は月3万円!地域おこし協力隊・甲斐友也が島で悟ったお金の真理

肩書きを聞いてもどんな仕事をしているのかよくわからない人たちのリアルなお金事情を探ろうという連載企画「ところで、どうやって稼いでいるんですか?」。第4弾は、大学在学中に地域おこし協力隊として鹿児島県・長島に移住し、食をベースに島の魅力を発信する活動を続けている甲斐友也さんをピックアップ。離島で気づいた、お金の真理とは。

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甲斐友也(かい・ゆうや)|1993年、大分県生まれ。鹿児島大学在学中にはじめてイベントで長島町を訪れる。その後、就職を辞めて地域おこし協力隊として移住。現在は地域の魅力を発信する季刊誌「

任期3年の地域おこし協力隊に参加してみて

——今日は東京にいらっしゃるわけですが、普段は長島にいるんですよね?

そうですね。とはいえ、島で採れた食材を食べてもらうイベントをやっていたりするので、なんだかんだで月に1回は東京に来ていますね。

——島の規模ってどれくらいなんですか?

住民は1万人くらい。離島の中では人口規模が40番目らしいです。島を1周するのに車で約1時間。山手線1周分くらいに相当するらしいです。

——島では具体的にどんな活動を?

島の魅力を伝える「長島大陸食べる通信」という定期購読誌を3カ月に1度のペースで制作しています。僕は編集長で、それ以外にデザイナーとカメラマンがいます。この媒体はちょっと特殊で、特集で紹介されている名産品がセットで届く仕組みになっています。送料込みで3,780円。収支はトントンなので、僕にはお金が残りません(笑)。

——そうすると、どうやって収入を得ているんですか?

地域おこし協力隊の一員として、役場から給料をもらっています。「長島大陸食べる通信」は、儲けるというより島の1次産業を応援するためのものですね。生産者さんが営業するときのツールになっていたりします。

——そもそも、地域おこし協力隊ってどんな仕事なんですか?

総務省管轄の事業で、地方にスキルを持った人を派遣して産業を興したり、移住を促進したりする役割を担っています。任期は3年。僕は長島へ来て、丸2年が経ちました。

——任期期間が終わったらどうするんですか?

何かしら事業をつくって残るか、島から出るか。そのどちらかですね。

島民の温かさに惹かれて気軽に移住を決めた

——ちなみに、なぜ長島で活動しようと思ったんですか?

僕は大分出身で、大学進学を機に鹿児島へ来たんですけど、当時からまちづくりに興味があったんです。あるとき、長島町のイベントをお手伝いする機会があって、そのときに協力隊の人に誘っていただいて。当時は予約制の食堂を運営していて、食を通じた場づくりをしたいと思っていたので、移住すればさらに可能性が広がりそうだなと。それで大学4年のときに長島に移り住むことにしました。

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——大学4年というと卒業後の進路を決めないといけないと思うのですが、就職する気持ちはなく?

もともとは宇宙関連の研究者になりたかったんです。それで理学部に進んだのですが、大学には自分よりも詳しい人が山ほどいて。大学という小さなコミュニティでそんなんだったら、全国にはもっとすごい人がたくさんいるじゃないか。そう考えたら途端に研究者の夢が遠のいて。それよりも、理科が好きな子を増やすためのPRとかに力を入れた方がいいんじゃないかって。それで東京で面接を受けたりしていたんですけど、その中で移住の話が進んでいって。23歳で移住したら、任期を終えて26歳で島を出ても、まだどうにかなるだろうって(笑)。けっこう軽い気持ちで移住しました。

——ということは、最初は学生との掛け持ちだった?

はい。でも、大学が地方創生を頑張っている学生を応援していて、しかも僕は卒論を終わらせていたので、月に2回だけ学校に行けばいい状態あったんです。だから、長島に住んで、ときおり鹿児島に通う生活が実現できました。

——協力隊のハードルって高いんですか?

役場に採用権限があるので、町ごとに協力隊がどういう位置づけにあるのかによると思います。長島町では、以前の副町長さんが総務省から来た若い方で、嵐のように新しい地方創生の事業を着手していたんです。だから、比較的自由度は高かったと思います。

——町の受け入れ体制があったんですね。

今でも島の方から「よくこんなところに来たね」って言われるし、お金ないだろうからって食材を家の前に置いてってくれたりします。協力隊の先輩とかはみんな個人で会社をやっていたりするので「学生あがりの甲斐くんは若いし、お金ないでしょ」って(笑)。ケータリングの仕事でも、売り物にならない食材を無料でくれたり、本当に支えてもらっていますね。

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毎月の生活費は月3万円くらい。でも、不自由はない

——実際にお金はないんですか?

地域おこし協力隊の給料が年間200万円。あとは個人でケータリングやイベントの仕事もやっているので、毎月コンスタントに収入はあります。それに家賃は1万円くらいで済むし、食費もほとんどかからない。車も使っていないものを譲り受けたので、生活に困ることはありません。毎月の生活費を合計すると3万円くらいじゃないでしょうか。そもそもお金に無頓着すぎて、まず通帳を見ないんですけどね(笑)。

——東京にもよく来るということですが、そのあたりのお金は?

実は、地域おこし協力隊には収入以外に年間200万円の活動費があって、起案書を提出して申請が受理されれば出張もできるんです。

——なるほど。ちなみに、長島に移住したことでお金に対する価値観は変わりましたか?

学生の頃から金銭感覚は全然変わってなくて。何も買わない時期もあれば、買い物に30万円くらい突然使うこともあるっていう(笑)。でも、島はないことが当たり前になので、物欲はなくなりました。スッキリしました。

——お金を使うとすれば、何に使いますか。

たとえば、勉強を兼ねて東京に来たら高いレストランに行ってみたり、地方創生の事例を知るためにいろんな地域へ行って、その場の特産品を買ったり。体験というか、勉強にお金を使うようになりました。

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協力隊の任期を終えて、長島に残った人はいない

——あと1年で期限の3年が経つわけですが、今後も島に残るという意思はありますか。

長島は、地域おこし協力隊によって新しい風を取り込むことを目的としているので、これまで3年目以降も島に残った人はいないんです。でも、僕はこれからも住んでみたいなと思っています。僕らみたいな人が移住してきたことで町がどう変わるのか、その変容を10年くらいのスパンで眺めてみたいんです。あと、僕自身がこの島の人や文化に寄り添うことで価値観が広がった気がしていて。「しまの編集部をつくる」と言っているのですが、この感覚を島の子供たちにも体験してほしくて、教育事業にも取り組みたいと思っています。そのためにも、自分が住み続けられる仕事をつくろうとしている最中です。

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——具体的に仕事は見つかりそうですか?

実は長島町の町おこし協力隊のメンバーで、旅館を買い取ったんですよ。6月には民泊をはじめる予定です。そこには食堂を併設することにしていて、長島の人たちの憩いの場にしていきたいなって。

——おもしろそうですね。

あとは東京のクリエイターさんを島に呼んで、島民を対象にしたワークショップも開催したいなと思っています。その謝礼もお金で払うのではなく、特産品を定期的に送るような仕組みにして継続的に島との関係が続くようにしたら、さらに何かが生まれるかもしれないですし。新しい風をどんどん入れていきたいですね。

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文:すみたたかひろ 編集:ペイミーくんマガジン編集部 撮影:玉村敬太

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