chill & work roseは、BathHausを通じて仕事と暮らしの在り方を再定義する。
お金の付き合い方は人それぞれ。どうやって稼ぐか、何に使うか、どれくらい貯めるか。そこに価値観や生き方が表れるような気がします。そこで、さまざまな人に聞いてみることにしました。「あなたにとってのお金とは?」を。今回話を伺ったのは、銭湯・コワーキングスペース・クラフトビールバーが併設されたハイパー銭湯「BathHaus(バスハウス)」を代々木上原にオープンさせた株式会社chill & workのroseさんです。
rose(ローズ)|1989年大阪府生まれ。カップルコミュニケーションアプリ「Couples」やソーシャルゲーム・Webメディアのプロダクト・マネージャーを複数経験した後にフリーランスとして独立。2017年に株式会社chill & workを立ち上げ、ボーイズ・エチケットブランド「shyboi」をスタート。また2018年11月には、銭湯・コワーキングスペース・クラフトビールバーが併設するハイパー銭湯「BathHaus(バスハウス)」をオープンさせる。
銭湯だと、適度な距離感で人付き合いができる
——BathHaus、すごくいい場所ですね。けっこうお金かかってるんじゃないですか?
具体的な数字は秘密なんですけど、CAMPFIREには7000万以上って書いてあります。
——7000万! 銀行から借りたんですか?
そうですね。あとは投資家とかクラウドファンディングとか。
——なぜそれだけのお金を借りてBathHausをつくったのでしょうか?
大学生のときにポーランドに住んだり、バックパックでいろんな国を巡ったりしていたことがあったんですけど、1年ぶりに日本に帰ってきたら人と人との距離感に寂しさを感じて。海外だとカフェやパブで見知らぬ人同士が会話することって当たり前にあったから。その後、就職して東京に来てからはその寂しさがより増して。
——それはどのようなところで?
満員電車に乗ってると、みんな負のオーラを放ってるじゃないですか。それって人や町に対してリスペクトがないからなんじゃないかと思ったんです。それで、この町に住み、仕事をしている人同士が話す場所があったら、もう少し愛着を持って何事にも接することができるのかなって。
——それがBathHausの着想に繋がったわけですね。でも、なぜ銭湯?
東京に来てから銭湯に行くようになったんですけど、ちょっとした下町付き合いみたいなものが残っていて。私、昔から金髪だし、人によっては不真面目だと思われるような外見だけど、銭湯だと誰もそんなこと気にしていなくて。あ、いいなって。日本だと内面よりも外面で判断されがちな印象があったんですけど、銭湯だとそういうこともなく、気さくに挨拶してくれるんです。しかも適度な距離感があるのもよくて。
——適度な距離感?
毎日絶対に顔を合わせるわけじゃなくて、気が向いた時間に行ったときにいる人たちと交流を育む感じがあるというか。
——なるほど。ちなみに、銭湯とバーとコワーキングスペースを一緒にしようと考えたのは、海外での経験が大きかったのでしょうか?
私自身、働くことが好きなんですけど、土日にわざわざオフィスに行きたいとは思わなくて。そういうときにちょうどよく働ける場所があったらいいなって。あと、私が新卒ぐらいのときにワークライフバランスの話が活発になったんですけど、それに少し違和感を感じて。仕事が楽しいときって「仕事のことを考えないでください」と言われても考えちゃうし、たっぷり休んで臨んだ月曜日でも気乗りしない日だってある。それを自分で調整できないのはおかしいじゃないですか。それで「働く」と「暮らし」が一体になった場所があれば、自分のタイミングで働いたり休んだりできるから、仕事がもっと楽しくなると思ったんです。
自分が気持ちいいと思えるものに囲まれていたい
——BathHausをつくったことで、お金の使い方は変わりましたか?
自分のために使うお金が減りましたね。服もあまり買わなくなっちゃったし。きちっとした格好をしていく場所がなくなったのが大きいかもしれない。この辺りに住んでいると気張らない感じになっていく気がします。それよりも、BathHausにお金を使った方が面白いなって。例えば、自分のために10万円の服を買うよりも、店の椅子に10万円を使った方が生まれるものが多いと思うんです。
——ちなみに、衣食住の中だと住にかける比重は大きいですか?
そうですね。人よりも家賃にかけるお金は大きいと思います。ただ寝に帰るだけの場所になると精神的にしんどくて。だから、ゆったりできる広さが必要だし、家具とかも適当に買うのは嫌で。自分が気持ちいいと思えるものに囲まれているのが好きなんです。
——お金の分配はどうしていますか?
私、料理をするのが好きで外食はあまりしないので、家賃と光熱費と自分の買いたいものを計算して、なんとなくこれくらい使えるなっていう金額で回している感じです。自分がほしいものがあったときに買えるだけの余剰は常に残しておきたいというか。
——そうしたら無駄遣いはあまりせず?
しないですね。中途半端なものにお金を使いたくないんです。例えば、すごくお腹が空いていてもコンビニでご飯を買いたくないとか。わざわざお金を払うんだったら、もっと有意義に使いたいんですよ。だから、友だちとご飯を食べに行くときも私が率先して場所を決めますし。「めんどくさいな、自分」って思うこともありますけどね(笑)。
——そうやってお金を使うことで、自分にどのような影響がありますか?
自分が気に入ったものを買うことで、アイデアに繋がっている感覚があります。食器とか家具はもちろん、野菜もファーマーズマーケットとかで選んで買うようにしているんですけど、そういうお金の使い方をすると充実感が全然違って。この食材は大事に調理しようとか、買ったものから膨らませられることが大きいんです。
——それっていつくらいからなんですか?
海外にいたときにそういう生活スタイルになりましたね。ヨーロッパを巡るなかで買った食器とか家具には思い出が詰まっていて、そういうものに囲まれた生活を送るようになってから、どうせ同じお金を使うなら自分の気に入ったものを買おうと思うようになりました。
——そういったものは、どこで買うんですか?
アンティークショップです。ふらっと立ち寄ったりして。今は海外にいたときに買ったものと、日本で買ったものが半々くらいあります。
——アンティークのどこに魅力を感じているんですか?
その当時に使っていた人が大切にしていた感じが伝わってくるというか。あと、つくり手のディテールへのこだわりとかも。パッと見ていいなと思って、使い勝手がよさそうだったらすぐに買っちゃいますね。
chill & workにこだわって、新しい場所をつくりたい
——そうしたこだわりはBathHausの内装デザインにも表れている気がします。
そうかもしれないですね。ここにあるランプとか棚もアンティークショップで購入したものだし。あと、カウンターの緑色も味のある感じにしてもらっているんです。内側も最初は白色の予定だったんですけど、オレンジ色の方がかわいくてテンションが上がるなと思って急遽変更してもらいました。
——社名に「chill(チル)」という言葉が入っていますが、気持ちのよさが大切な要素なんですね。
そうですね。私、曇りの日とかはめっちゃテンションが低いから、走って気分を上げるようにしています。
——けっこう運動する方ですか?
寝不足より運動不足の方が嫌で。毎日6時半に起きて、7時にはジムで運動するようにしています。気持ちのいい状態をキープした方がアイデアが浮かぶし、人との付き合いもスムーズだから。それに運動していれば、エステとか病院に行かなくていいんじゃないかなって(笑)。
——これからBathHausをどういう場所にしていきたいですか?
この地域一帯に住んでいる人とコワーキングの人がいい感じに混じり合って、新しい何かが誕生すればいいですね。やっぱり場所はつくっただけでは意味がなくて、人に使ってもらってようやく価値が生まれるから。あとはchill & workにこだわって、いろんな地域に「仕事」と「暮らし」が一緒になった場所をつくっていきたいですね。
文・ペイミーくんマガジン編集部 写真・室岡小百合