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駒下純兵が乗り越えた、創業3年目の転換期。

人間誰だってお金の失敗くらいある。それは日々大きな額のお金と向き合う経営者だって同じはず。連載「お金に負けた日」では、人がどんな失敗をして、その度にどうやってその局面を乗り越えてきたのかを探ります。第2回に登場するのは2019年4月に「ForbesUnder30」にも選出された、期待の起業家・駒下純兵さん。カップルのエモい写真を撮影する「ラブグラフ」というサービスを大学時代にはじめ、今年2月には2億円の資金調達でも話題となりました。ここに至るまでにどんな失敗をしてきたのでしょうか。

駒下純兵(こました・じゅんぺい)|ラブグラフ代表取締役。1993年生まれ。学生時代に戦場カメラマンを志すも、「幸せの連鎖を起こしたい」という思いからカップルの撮影を行うように。2015年にカップルや夫婦、家族のデートにカメラマンが同行して撮影するフォトサービス「ラブグラフ(Lovegraph)」をスタート。今年4月には「Forbes Asia Under30」にも選出された。@komage1007

——駒下さんがラブグラフを立ち上げたのは大学生の頃なんですよね?

はい。その頃は戦場カメラマンになりたいと思っていました。悲惨な現状を伝えることで戦争を止めれたらいいな、と。でも、戦場写真を撮って戦争を止めることはすごく難しいと感じるようになり、それよりも目の前の幸せに目を向けてもらえるように小さな幸せを写して、一人ひとりを幸せにすることが結果的に世界平和に繋がると考えました。ちょうどそのときにBEAMSの「恋をしましょう」という広告が出ていたんですけど、それがすごく良くて。

——川島小鳥さんが写真を撮られている広告ですよね。

自分もこんなふうに自然な写真を撮りたいと思って、作品撮りも兼ねて大学の友人カップルを撮影し、友人たちとウェブサイトを立ち上げました。そうしたら初日だけで3万PVくらい見られて、しかも開始1カ月でリクルートや富士フイルムからも仕事がもらえたんです。

——すごい勢い。

当時はまだ就活しながら、5,000円くらいの撮影費と交通費をいただいて撮影する生活でした。でも、地方の撮影になると、お願いする側は5,000円の撮影費に対して交通費で3万円くらい払うこともあって。それはもったいないだろうなと思って、現地のカップルと現地のカメラマンをつなぐサービスへと転換したんです。そうして僕が立ち回らなくてもいいようになり、キャッシュフローも回りはじめて、大学3年生のときに法人化しました。

——卒業したら会社一本でやっていくつもりでした?

創業メンバーは就職することになっていて、僕も最初は副業としてやろうと思ってたんです。でも、スカイランド・ベンチャーズ代表の木下慶彦さんがやっているスタートアップスクールで出会った、エンジェル投資家の千葉功太郎さんに話をするとすごく面白がってくれて。それで「これまでプロのカメラマンと接点のなかった一般人がお金を払うことで、消費行動を大きく変えることができる。何よりこの企業が大きくなれば、世の中が幸せになるんだから、自信を持ってやりなさい」って。

——その言葉は励みになりますね。

しかも投資までしていただき、創業1年目にも関わらず会社の規模を大きくすることができました。毎月バイト代で数万円しか稼いでいなかった学生の通帳に、いきなり1,000万円という大きなお金が入ってきたので、最初の資金調達はかなり印象に残っていますね。千葉さんがいなかったら、副業としてしか会社をやっていなかったと思います。

中心メンバーが次々と離脱。資金も底をついた3年目の暗黒期

——大きな失敗というか、辛かった時期はなかったんですか?

大きな転換期を迎えたのは3年目ですね。お金がなくなりそうになって絶賛ファイナンスをしている中で、創業時から在籍していたエンジニアがやめてしまって。それは完全に僕の力量不足というか、コミュニケーション不足のせいなんですが、会社全体がズーンと重い空気になって。

——それだけ存在感のある人だったんですね。

しかも同じ月に立て続けに3人が辞めて、会社の雰囲気は最悪。メンタル的にもそうだし、物理的にも人が減っていくので事業はもちろん伸びなくて。今でこそ話せるようになりましたが、その中でのファイナンスは地獄でした。主要メンバーが次々と抜けて、投資の話も決まるか決まらないかの瀬戸際で残高もゼロに近づいていた。

——それはもう瀕死状態……。

最悪ですよ。僕に余裕がないからみんなピリピリしていて、隣の人にも気軽に声をかけれない。slackで「いま話しかけていいですか」と尋ねてからでないと声をかけづらい環境でした。当時も今と同じオフィスでしたが、あの空気感からここまで変わったのは本当に信じられないですね。

——そんな時期をどうやって乗り越えたんですか?

グリーベンチャーズの堤達生さんが「ここから何を学ぶかが大切だ」と言って出資を決めてくれたことですね。2017年の6月でした。そのあとに元LINEの吉村創一朗とグリーベンチャーズの根岸奈津美さんの2人が入社してくれたことがすごく大きくて。しかも根岸さんは、「ラブグラフへの愛が止まらないから」ということで12月からはフル出向もしてくださって。たぶん週8で働いてましたよ、本当に(笑)。

——どうして2人はジョインしてくれたんですか?

吉村は僕がずっと口説いてたんですけど、まだやりたいことがあるからと一年くらい前に断られていて。でも、グリーベンチャーズから出資をいただいたタイミングで当時のナンバー2が辞めてしまい、本当にあとがなくなって。もう土下座して入ってくれと頼みましたね。

——藁をもすがる思いだった、と。

はい。だから、自分のビジョンを熱く語って口説いたとかそういうカッコいいものじゃないんです。そうしたら「良いサービスなのに潰れるのはもったいない。俺ならこの事業を伸ばせる」とジョインしてくれました。

——吉村さん、イケメン……。

入社したときに「僕が来たからもう大丈夫です」って。実際に少しずつ安定していったのが本当にすごいです。

自分がこの会社を辞めたら悲しむ人がいる。そのために踏ん張れた。

——ちなみに、仕事をやめたいと思ったことはありますか?

やっぱり創業3年目のゴタゴタしていた時期はやめたかったですよね。

——もう楽になりたい、と。

僕、人生ではじめて人前で泣いたんですよ。そんな状況でも頑張っていきたいと朝会でみんなの前で話していたら、もう我慢できなくなって。

——メンバーはそれをどう受け止めれくれたんですか?

どうでしょう。聞いたことがないのでわかんないです。でも、支えてあげようと思ったから、みんな残ってくれたんじゃないかな。とにかく、あの時期を乗り越えてくれたメンバーには本当に感謝しています。

——それでも踏ん張れたのは、何が大きかったんですか?

何より自分が事業を潰したら悲しむ人がたくさんいて、このサービスは世界中を幸せにするはずだと心から信じれたからだと思います。カメラマンのコミュニティもできていて、これがなくなってしまうのは絶対に良くないと。自分がお金持ちになりたいとか、そういう理由で起業していたら絶対にやめていたと思います。お金のために頑張るにはわりが合わなすぎますからね。

——そうした苦難の乗り越え、事業も順調に伸びています。会社がここまで大きくなったことに対して、代表としてプレッシャーを感じますか?

もちろん。でも、それは良いプレッシャーだと思っていて。グリーベンチャーズが何より男前で。「駒下はお金のことを気にするな。こちらがなんとかするから事業に集中しろ」っていう姿勢なんです。そういう社外の人たちも含めて本当に良い仲間に恵まれたなと思います。だから、見放されてしまうかもしれない、みたいな不安はないです。

——むしろ、創業3年の方が不安だった?

間違いないですね。あの頃はこまめに通帳を見ては、どうすればキャッシュフローが良くなるんだろうと毎日考えてましたから。大きなビジョンを描くべき人間が、足元のお金ばかり気にしていて良くないなと思っていましたが、当時の僕にはそんなにすべてを見渡すキャパもなくって。

お金を得た先に幸せはない

——今年に入って、いよいよ2億円という大きな資金調達を実施しました。

億を超える調達をすると、採用がしやすくなるんです。それは資金調達のおかげで変わりましたね。優秀な人材に適切な報酬が出せるというか。大企業から創業して数年しか経っていないスタートアップに転職するのってそれだけでリスクじゃないですか。それを金銭面だけでもフォローできるのは大きいですね。

——事業としても安定してきましたか?

すごくいい流れが来ていると思っています。最近は出張撮影というマーケットも伸びていて、競合も増えているんですよ。これまでは自分たちだけで走っている感じで、速度も適切かわからずにいたので、良い意味でもっと頑張ろうという気になっていますね。

——駒下さんは、会社の成長とともにお金に対する価値観も変わりましたか?

あんまり変わらないかもしれないですね。さすがに明日食う飯に困るとかだと辛いと思うんですけど、毎日1万円の焼肉が食べたいわけじゃないし、お金があっても僕は変わらず吉野家の牛丼をおいしいと思えるタイプだと思います。

——お金があっても幸せとは限らない?

すでに成功された経営者から「山を登りきった先には何もなかった」と以前聞いたことがあって、幸せは目的にできないなと思ったんですよね。幸せは山を登る過程にある。僕で言えば、誰かに評価されたり、イグジットすることになっても、きっと何も変わらない気がします。それに資本市場は基本的にマーケットの大きさで会社の価格が決まる構造になっているので、純粋に世の中に提供する“価値の高さ”と“価格の高さ”が比例するとは限らないんですよね。

——そういったことに葛藤を感じることはありませんか?

ありますよ。でも、お金を持ったり評価されたりすることよりも、自分の知らない人がサービスを使ってくれたり、自分の好きな人が仲間に加わってくれることの方が幸せだなって思うんです。それはForbesで一定の評価をいただいてから、より強く感じるようになりました。だからこそ、「ラブグラフ」を通じて幸せになれる人をもっと増やしていきたいですね。

文・すみたたかひろ 編集・ペイミーくんマガジン 撮影・大森めぐみ


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