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辻愛沙子は、理想とする世界の実現ためにお金に無頓着になった。

お金の付き合い方は人それぞれ。どうやって稼ぐか、何に使うか、どれくらい貯めるか。そこに価値観や生き方が表れるような気がします。そこで、さまざまな人に聞いてみることにしました。「あなたにとってのお金とは?」を。今回話を伺ったのは、タピオカミルクティー専門店「Tapista」のプロデュースや、女性のエンパワメントや健康促進を目指すプロジェクト「Ladyknows」などを手がけるクリエイティブディレクター辻愛沙子さんです。

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辻愛沙子(つじ・あさこ)|株式会社arca CEO、クリエイティブディレクター。中高時代をイギリス・スイス・アメリカで過ごす。慶應義塾大学への進学を期に帰国。在学中の2017年4月に株式会社エードット(カラス)に入社。社会派クリエイティブを掲げ、「社会性のある事業」と「世界観に拘る作品」の両軸で、多数のプロジェクトを手がける。2019年4月には女性のエンパワメントやヘルスケアを促すプロジェクト「Ladyknows」を発足。また、日本テレビ「news zero」で水曜日のレギュラーコメンテーターも務める。2019年10月にエードットのグループ会社として「arca(アルカ)」を創業し、代表取締役社長を務める。@ai_1124at_

ハマるとそれしか見えなくなる

——辻さんは普段どんなものにお金を使うんですか?

コレクション欲が強くて、同じようなものをたくさん買ってしまうんですよね。今は化粧品を狂ったように集めてるんですけど、将来的にコスメの仕事をしたいと思っているので、もはや趣味なのか仕事なのかわからない感じになってます。

——それって昔からですか?

そうですね。一度好きになるとなかなか熱が冷めないタイプで、徹底的にリサーチしてほしい物を探したりします。15歳くらいの頃は原宿カルチャーが大好きだったんですけど、海外に留学していたので、転送ドットコムというサイトを使って『ZIPPER』を取り寄せてました。あとは漫画やフィギュアとかを集めるのも好きだったし。

——それって家族の影響が強かったりしますか?

言われていればそうかもしれないですね。私は母と性格が似てるんですけど、彼女もハマるとそれしか見えなくなるタイプなんですよ。そういえば、実家のダイニングには陶器のお皿が壁一面に飾ってあります。もしかしたら、知らない間に影響を受けていたのかも。

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——ほかにハマっているものはありますか?

King Gnuですね。もともとTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTやBLANKEY JET CITY、あとゆらゆら帝国が好きなんですけどリアルタイムで聴けなかったこともあって、ものすごく尊くて。アルバムを5枚出したら解散すると言っているから、この瞬間を逃したらいけないと思ってライブもアルバムも基本的に全部チェックしています。

——力の入れ具合が半端ないですね。

過集中がひどすぎて、できることとできないことの差がすごいんですよ。今だとほとんどの時間を仕事に割り振っているので、プライベートというものが全然なくて。きちん生活を営んでいる人からすると、ひどい時間の使い方をしていると思います(笑)。

——働くか、寝るか、みたいな?

はい(笑)。でも、仕事を“しなきゃ”みたいに思うし、なんならもっともっとやりたい仕事はたくさんあるので、睡眠も取らなくていいなら取りたくないっていう。

——仕事に全振りしているんですね。

だから、良くも悪くもそこまでお金に頓着しない方なのかなとは思います。仕事も社会貢献と制作欲求がモチベーションの軸になっているので、お金はいざと言うときの選択肢と自由のためというくらいの感覚です。ただ、こだわりが強いので、自分のなかで譲れない部分を実現できるぐらいの財力は持っておきたいなとは思っています。例えば、数年前、ハイトーンのロングヘアだったときはヘアスタイルに対して常軌を逸したこだわりを持っていて、1日に美容院を3軒ハシゴして完成させてたんですよ。

——3軒!? それはどうして?

エクステがうまい美容院と、カラーがうまい美容院と、カットがうまい美容院がそれぞれ違ったんですよ。その当時は、自分が理想とする世界観を表現することに命をかけていたんだと思います。しかも、中高生くらいの頃って自由にアウトプットできる場がそんなに多くないじゃないですか。だから、なおさら当時はいちばん自由のきく自分の髪型とか身の回りのことを一種の作品みたいに捉えていたんだと思います。今だと仕事で表現できるようになっているので、逆に自分にあまり頓着しなくなっているんですけど。

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惹かれるのは、終わりの美学があるもの

——理想とする世界観って昔から変わってないですか?

新しいカルチャーを知ることで影響を受けている部分もあると思いますが、昔から好きなものはずっと好きですね。人だとコートニー・ラブやチバユウスケや平沢進、あとAmoちゃん。作品だと『グランド・ブタペスト・ホテル』や『ヴァージン・スーサイズ』とか。

——けっこう振り幅ありますよね。

かもしれないですね。繊細で美しい世界と、強く泥臭い世界のどちらも好きで。でも、表現の方法が違うだけで根底にあるものはすごく似てる気がしていて。きっと刹那的なものが好きなんだと思います。

——刹那的?

King Gnuが好きなのも、終わりが見えているからだと思うんですよね。もちろん音楽性が何より最高なんですが。『ヴァージン・スーサイズ』でテーマになっている少女性とかもそうじゃないですか。期間が限られているからこその表現というか。私はそこに人間性を感じるんですよね。消費されて刹那的に終わるのではなく、消費されないために刹那的になっているというか。

——辻さんがつくっているものって、まさにそうだなと思いました。そのときにしかつくれないものを追求しているというか。

それは間違いなくありますね。終わりがあるということは、スタートがあるということだと思うんですよ。世の中により良いものが生まれたら変わっていくべきじゃないですか。そういう意味でも刹那的なものが好きなのかもしれないです。

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すべては自分の理想とする世界を実現するため

——仕事をするようになったことで、自分の理想とする世界観を実現できる可能性も大きくなっているわけじゃないですか。それによって自分事化するテリトリーも広がっていますか?

そうですね。でも、社会に革命を起こしたい! みたいなことはまったく思ってなくて。私は、日常的に感じる怒りや愛情を形にしたいという気持ちが強いんです。そういう意味では、個人的な目的に寄っているというか。結果として社会に還元されることがあるかもしれないんですけど。

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——その個人の目的に寄っているのには何か理由があるんですか?

中学・高校を海外で過ごしたんですけど、寮生活の中で日本のカルチャーに救われたことが大きいかもしれないです。だからこそ、人の心に訴えかける情緒的なものがつくりたいのかなって。ものづくりの素晴らしいところって、ひとつアウトプットがあるとそれだけで自分のメッセージを伝えられることだと思うんですよ。だから、議論するよりも行動することに時間を使いたいし、仕事をずっとしていたいのかなって。

——お金の使い方にしても、すべては自分の世界観を実現したいというところに帰結しますよね。

そうですね。今は仕事に集中しているから、あまり意識していないんですけど。でも、無限に使えるお金があったら生理用品の工場をつくりたいとかやりたい事業は山ほどあって、きっと際限ない気がします。

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取材・文:村上広大 撮影:室岡小百合


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