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3日で700万円を返済する高山洋平の処世術。

人間、誰だってお金の失敗くらいある。連載「お金に負けた日」では、人がどんな失敗をして、その度にどうやってその局面を乗り越えてきたのかを探ります。今回登場するのは、株式会社おくりバントの代表・高山洋平さんです。斬新なアイデアで数々のクリエイティブやPRを手がけている同社は、創業5年目となる2019年に初の黒字決算を達成しました。しかし、この快挙を成し遂げるまでにさまざまなお金の危機があったとか。「お金が入ってもすぐに使っちゃう」と語る高山さんの失敗談をお聞きしました。

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高山洋平(たかやま・ようへい)|おくりバント代表。東京都出身。大学卒業後に不動産会社を経て、IT業界大手アドウェイズ入社。アドウェイズ中国支社の営業統括本部長を経験し、2014年にアドウェイズの子会社として株式会社おくりバントを創業した。「得点圏まであなたを」を企業理念に、広告やクリエイティブ全般を手がける。本人は年間360日は飲み歩く“飲みのプロ”でもある。@takayamayohei1

会社設立後すぐにお金で失敗

——黒字決算おめでとうございます。5年目にして初の出来事ということなので、これまでさまざまなお金の失敗をしているのではないかと踏んでいるのですが、実際のところはどうなんでしょうか?

世の中にはいろんな経営者がいると思いますが、僕が唯一誇れるのは自転車操業が得意なことくらいなんですよね。本当に先を見越してお金を管理することが苦手で。例えば、20歳のときにプレステ2がどうしてもほしかったんですが、どうにも買うお金がなかった。そのタイミングで当時付き合っていた年上の女性が、僕の家に財布を置き忘れていったんです。それで中身を確認したら3万円入っていて。プレステもちょうど3万円くらい。ギリギリまで悩んだ末、あとで返金と平謝りする覚悟を決めて、そのお金でプレステ2を買ってしまったことがあります。

——彼女はどんな反応を?

「どうしたの?」と聞かれたので正直に「プレステ2を買うのでお借りしました」と答えました。もう、冷や汗が枯れるくらい怒られましたね。あ、ちなみにその年上の彼女が、今の奥さんです。もちろん、バイトの給料日後にちゃんとお金は返しましたよ。

——いきなりすごい馴れ初めを聞いてしまいました。

そんな人間なので、会社をつくることになったときもお金のことはあんまり考えなくて。親会社であるアドウェイズから設立資金として1,000万円出してもらったんですけど、クリエイティブの会社だから内装とかデザインにこだわらないといけないという先入観があって、本陣をつくったり、アンティーク家具とかで凝った内装を施した結果、一切の悪意なく300万円ほど使ってしまったんです。

——300万! それは怒られませんでしたか?

顔面蒼白を通り越して、もはや血色が良くなるくらい怒られましたね。しかも、社員の給料のことをすっかり忘れていて、起業初月に資本金の半分くらいがなくなってしまいました。

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——何も計画性がない状態だったんですね。

はい。そんな調子で、おくりバントを経営していたある日、本社への返済期限があることを知ったんです。アドウェイズの社長である岡村さんから「3日後までに700万円返済しないとおくりバントは倒産だよ」と。当時の自分は親会社への借金は、返済の目処が立ったら返せばいいと本気で思っていたんです……。

——めちゃくちゃ危機じゃないですか。そのときはどうしたんですか?

焦ってがむしゃらに営業しました。とにかくお金をもらわなければいけないので。とりあえず、約束だけ取り付けて手付金を受け取る契約をしていました。

——そんなことできるんですか……?

それが、できたんですよ。というのも、おくりバンドの設立前にアドウェイズの上海支社にいたんですけど、株で儲けたお金が300万円くらいあったんです。それで上司に怒られながらも、仕事をしないで半年間ほど遊びまくっていて。そのおかげで、行列ができるほど人気のスナックに顔パスで入れるようになったし、めちゃくちゃ上手なマッサージ屋さんとも仲良くなれたし。最終的にスナックの入っているビルの上の階に住むようになって、「お疲れ様でした!」と元気よくクライアントに挨拶したら家にすぐ帰れるようにもしました。その頃には「上海一のポン引き」という噂が広がって

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——いつの間にかとんでもない地位を築いていたんですね。

で、その当時によく上海で遊んでいた社長のところに営業することにしたんです。運良く『BRUTUS』のスナック特集に自分が掲載された直後だったので、それも持参して。自分が写っているページを見せながら「こんな感じで絶好調です」と近況報告をしつつ、資金繰りについても説明するんです。そしたら「え、それヤバくない?」みたいに心配されて。

——そうなりますよね(笑)。

なので、間髪入れずに「これだけ注目されてるのに、お金を理由に諦めたくありません。だから、僕にお金を預けてください!」って。ポイントはお金なんて優先度が低いんだけどっていう態度を演出することですね。本当はお金の優先順位がいちばん高いんですけど。

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——口説き方が大事なわけですね。

お金の話は重たくなりがちだから、辛気臭く小声で「お、お金を貸してください……」と言うより、「お金ください!」って威勢良く言う方が向こうもきっぷ良く払ってくれると思うんです。たぶん。

——その社長さんに700万円出してもらったんですか?

いえ、ほかにも海が好きな社外取締役に「浜辺で打ち合わせしましょう」と持ちかけました。そのときは向こうも何か察したのか「金か? 金の問題か?」と聞かれたので、ひとつ返事で「そうです」と(笑)。あと、知り合いに「なんでもやるから100万円前払いしてください」と頼み込み、それで700万円をかき集めました。

——最後の方は力技に拍車がかかっていますね。

でも、そういうことばかりなんですよ。だから、今は怖くもなんともない。大切なのは莫大なお金じゃない。銀座のクラブで遊びたいわけでも、タワマンに住みたいわけでもない。毎晩、中野で飲み歩き、好きなときにラーメン二郎に行けて、たまに旅行できる程度の生活を維持したいだけなんです。足るを知りながら、程よく一生稼げるように頑張ります。

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安定収入をとるか、瀬戸際の営業に快感を求めるか

——ちなみに、どうやって黒字化を達成したんですか?

これはすごく簡単な話で、毎月固定で収益がある案件を確保したんです。

——それだけですか?

はい。これまでは3カ月に1度くらいのスパンで、ものすごく大きな案件を確保して生きてきたんですけど、去年の12月にまた危機があって、さすがに嫌気が差してしまって。それで、もうこんな生活はやめて長期的なスパンで請け負える仕事を取りに行こうと考えを改めました。

——その日暮らしな経営をしていたんですね。

この案件を受諾できないと会社が潰れるっていうギリギリの状況で仕事が取れた快感に夢中だったんだと思います。なんだか、ビジネス系マンガのキャラクターみたいでドラマチックじゃないですか。

——生粋のギャンブラーですね(笑)。

パチンコや競馬はやらないんですけど、もしかしたらそうかもしれないですね。チョウ・ユンファの『ゴット・ギャンブラー』や『アカギ 〜闇に降り立った天才〜』などを見て育っているので。

——社員の方々は、そうしたハラハラする状況を知っているんですか?

もちろん。そういう状況を理解できる人としか仕事をしていないです。というか、そういう人でないと、自分とは仕事をしてくれないです。

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お金の使い方が独自すぎて、会社でひとつのジャンルを確立してしまった

——それにしても今年は絶好調じゃないですか?

そうですね。おかげさまで依頼を途切れずにもらっています。

——さすがです。では、今はそこまでお金のことを考えてない?

今ではある程度計画もしてますよ。だけど、2〜3年後のことなんてわからないし、そんなに長期で考えてもその通りになることはない。あくまで、再来月くらいまでのことをゆるく考えているくらいのレベルですが。

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——なるほど。それにしても子会社でそういう働き方を実現できているのがすごいですよね。

そうですね。もはや独自すぎて、ひとつのジャンルを確立してしまったというか。ただし、ひとつだけ鉄の掟があって。本社と握った売上目標を達成できなかったら、どんな言い訳も通じない地獄の会議が待っています

毎日遊んで飲めるだけのお金があればいい

——根底には、ちゃんと売上を確保しようという思いはあるんですね。

もちろん。岡村さんに怒られたくないですもん。怖いから(笑)。とにかく、中野周辺で毎日飲めるお金を稼ぐことが大切なんです。飲み屋で出会ったクリエイターやクライアントと仕事をすることも多いですしね。さまざまな職種、性格の人と話すから教養が増えます。何より友達がたくさんできるんです。だから、日頃の飲み代は決して無駄金ではないと思ってますよ。

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——今後もそのスタンスは崩さず?

お金が余ってたら自分たちの好きなことに使いたいですよね。去年、MVをうちで撮影してるアーティストのフリーライブを開催したんですよ。結局、けっこうなお金を使って怒られちゃったんですけど。

——ダメじゃないですか(笑)。

ほら、お金は使ったところに回ってくるって太古の昔から言われているじゃないですか。それを実践してるというよりは、その話が事実かどうかを自ら社会実験しています(笑)。お金はあるだけ使っちゃうけど、最低限の品は持って生きたいんですクズ界の中では上品なスタンスでいたい。小物界の大物を目指しているわけですよ。

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文・すみたたかひろ 編集・村上広大 撮影・大森めぐみ

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